2009年10月13日火曜日

インタビュー・環境戦略を語る:三井住友海上火災保険・秦喜秋会長

インタビュー・環境戦略を語る:三井住友海上火災保険・秦喜秋会長
 国内大手損保のうち、アジア展開で先行する三井住友海上火災保険は、インドネシア・ジャワ島で熱帯雨林の再生プロジェクトを手がけるほか、生物多様性の保全に向けた取り組みで国内企業と連携を図るなど、環境活動を推進している。秦喜秋会長に、狙いと抱負を聞いた。【聞き手・宇都宮裕一、写真・小出洋平】

 ◇アジアの森林を再生
 --熱帯雨林再生プロジェクトとは?

 ◆ジャワ島中部のパリヤン野生動物保護林内にある荒れ地430ヘクタール(東京ドーム約90個分)を、元の豊かな熱帯雨林に戻す計画です。かつては希少動物のオナガザルが生息していたのに、97~98年のアジア通貨危機に伴う混乱の際に不法伐採され、荒れ地に変わり果てました。今年3月まで4年かけて30万本を植樹し、11年までの再生を目指します。

 --始めた理由と成果は?

 ◆当社は契約書類などに年8600トンもの紙を使っており、世界の森林に負荷をかけています。一方、アジアは当社の国際展開で最も重要な地域なので、現地の熱帯雨林の再生に協力できないかと考えました。植林で森は次第に緑を増し、野鳥29種と昆虫18種と多様な生物が戻ってきました。現地の人に植林してもらうことで、森を守る重要性を認識してもらうとともに、収入源になる果樹も一緒に植えるなど、住民と森が共存するための工夫も凝らしました。

 --なぜ生物多様性を重視するのですか?

 ◆生物多様性は、人間の豊かな生活には不可欠です。しかし、人間の勝手な行為で環境が破壊されれば、すぐに失われてしまいます。そこで当社は、同じような問題意識を持つ国内企業と「企業と生物多様性イニシアティブ」(27社)を設立。情報交換のほか、各社の取り組みを紹介するシンポジウムの開催などを始めました。

 --保険や金融での環境関連の取り組みは?

 ◆当社の代理店を務める自動車整備工場で、エンジン内部のすすを取り除き、燃費を10%以上改善する「エコ整備」を10年間続けるなど、本業に直接関係する環境貢献にも積極的に取り組んでいます。事故車などの修理では、リサイクル部品の活用を進めていますが、それによるコスト削減効果の一部を、公共施設の太陽光や風力発電設備設置のために寄付しています。

 --今後の抱負は?

 ◆環境への取り組みは本業の一つで、終わりはありません。来年4月にあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険と経営統合し、収入保険料で日本トップの損保会社になりますが、環境面でも統合効果を発揮したい。生物多様性保全のための取り組みをアジアで続け、人と動植物が共存できる地球づくりに貢献したいと思います。

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 ■人物略歴

 ◇しん・よしあき
 九州大経卒、68年住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。副社長を経て06年から現職。三井住友海上グループホールディングス会長を兼務。大分県出身。63歳。

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