2009年8月17日月曜日

【業界予測 ’09夏】生損保、本業なお苦戦 危機を逆手、商品力勝負

【業界予測 ’09夏】生損保、本業なお苦戦 危機を逆手、商品力勝負
2009/8/15





 金融危機による深刻な打撃を受けた保険業界は、ようやく平時に戻りつつある。14日に出そろった主要生命保険9社の2009年4~6月期決算は、金融市場の回復を受けて運用面が改善し、全社が最終黒字を確保。主要損害保険も7社中5社で最終利益が増益となった。ただ、市場縮小に景気低迷が追い打ちをかけ、保険の販売不振が目立つ。保険の売れ行きは実体経済に遅れて影響が出るとされるだけに、厳しい環境に対応した経営戦略の成否が明暗を分けることになる。

 ≪市場回復で一息≫

 生保の4~6月期決算は、期末の有価証券含み益が9社合算で09年3月期末から2倍以上の4兆円超に回復した。株式相場の低迷で3月期末の含み益は1年前に比べて7兆円以上減少したが、金融危機の影響からようやく抜け出しつつある。

 一方で、企業業績の悪化を背景に、保有する有価証券の配当金や利息収入が減少した。主力の保険販売もふるわず、不況が依然として経営の重しになっている。本業のもうけを示す基礎利益は最大手の日本生命保険で前年同期比19.8%減など6社が減少。中小企業の経営者向け保険を扱う大同生命保険では、新契約の保険金総額を示す新契約高が2けた減となり「不況の影響の表れ」と話す。

 将来の備えである保険商品は、実体経済の動きに遅れて影響が出てくるとされる。給与減や雇用不安が長引けば「下期でさらなる影響は避けられない」(大手生保)との見方は強い。

 こうした中、不況や少子高齢化による「需要の変化」をつかんだ商品は好調だ。価格競争力をもつ外資生保や損保系生保は、金融危機以降も売れ行きを伸ばし「シンプルで安価な保険は不況に強い」(米アフラック)と手応えを感じている。

 明治安田生命保険は定額年金が好調で、4~6月期で保険料等収入が前年同期比2けた増となった。「死亡保障一辺倒から年金や医療保険に需要がシフトしている」表れといえ、消費動向の変化に対応した戦略が求められていることを示す。

 ≪成長のカギは海外≫

 生保に輪をかけて不況の影響を受けそうなのが損保業界だ。

 貨物や船舶にかける海上保険は輸出入の荷動きに連動するだけに、全社で2けた減となり、「回復にはある程度時間がかかる」(三井住友海上グループホールディングス)とみる。不況が長引けば、主力の自動車保険も保険料が安価な通販損保に顧客を奪われる可能性は高い。

 今後、成長のカギを握るとみられる海外戦略で一歩先をゆくのが、東京海上ホールディングスだ。4~6月期決算では米保険会社の買収が収益に貢献し、売上高は大手で唯一増収となった。東京海上を除く5社は10年4月の統合を選んだが、すみやかに統合効果を発揮し、海外に資本を振り向けられるかが勝負となる。

 先行き不透明な景気と、少子高齢化による市場縮小という“二重苦”を抱えた生損保。いずれも安定・節約志向をつかんだ商品や、海外市場の開拓など市場の変化に対応した経営戦略に、成長がかかっている。(滝川麻衣子)

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