2009年8月29日土曜日

異常気象で「天候デリバティブ」人気 支払い増 損保経営圧迫も

異常気象で「天候デリバティブ」人気 支払い増 損保経営圧迫も

2009/8/29


 異常気象や天候不順による集中豪雨や台風被害が多く発生し、天候に関する金銭的被害のリスク回避を狙った損害保険商品への問い合わせが急増している。損害保険会社にとっては、気候変動は商機である一方で、想定を超えた保険金の支払い増加は経営を圧迫するため、警戒感も強まっている。

 「天候デリバティブ」は、気温や降水量、降雪量などの指標が、契約した数値を超えて変動した場合、一定金額を保険会社が支払う。例えば、気候の変動で客足が大きく左右されるレジャー施設や行楽地などにメリットがある。

 被害の発生に伴って保険金が支払われる損害保険と違い、気象状況が一定の条件を満たせば損害審査もなく、手続きが早いという。

 損害保険ジャパンは、天候デリバティブの見積もりの申し込みや問い合わせが、昨年同期比3割増加した。「6~7月の豪雨で客足が減少したレジャー施設などで関心が高い」という。9月以降の本格的な台風シーズンを控え、「農業関係者からも、台風の通過数を判定基準にするデリバティブの照会が増えている」という。

 三井住友海上火災保険も、天候デリバティブへの問い合わせが3割増えたほか、日本興亜損害保険も倍増した。三井住友海上は、グループ会社のインターリスク総研を通じ、自然災害による被害を予防する「防災診断事業」も一般企業向けに提供している。

 一方、多数の死者、行方不明者を出した九州・山口の水害や台風9号だけで、大手損保6社の保険金支払額は現時点の概算で計100億円に上る見込みだ。各社は災害の支払いに備え、年度ごとに見込額を立てているが、これから災害の多い9月を控えている。

 例年よりも災害が少なかった昨年は、大手6社中5社で年間の支払実績が24億~64億円だっただけに、「9月以降の天候が気掛かり」(業界関係者)な状態だ。ゲリラ豪雨や竜巻のようなこれまで想定されなかった被害への懸念も強まっており、損保業界は環境の変化に伴うリスク管理の難しさに直面している。(滝川麻衣子)

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