2009年8月20日木曜日

エコナビ2009:体質強化狙い、大型統合続々 海外市場に活路求め

エコナビ2009:体質強化狙い、大型統合続々 海外市場に活路求め
 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 ◇新日石・新日鉱HD/新生銀・あおぞら銀/キリン・サントリー
 国内企業の大型統合が相次いでいる。成長が見込める海外での活動を強化するのが狙いだ。金融危機で機能不全に陥った金融市場が、最近は落ち着きを取り戻しつつあり、海外でのM&A(企業の合併・買収)に必要な資金が調達しやすくなったことも背景にある。大型統合に刺激され、業界再編が加速するとの観測も出ている。【工藤昭久】

 今年7月、キリンホールディングス(HD)とサントリーHDが経営統合交渉を進めていることが明らかになった。両社の統合が実現すると国内でビールや清涼飲料でトップクラスのシェアを持つ食品会社が誕生するが、両社トップの視線は頭打ちの国内市場よりも成長が見込める海外市場に向いている。M&A助言会社・GCAサヴィアングループの佐山展生取締役は「規模を拡大し、欧米メーカーとの競争に勝ち抜くことを見据えた行動だ。食品だけでなく他業界にもインパクトを与え、業界再編の起爆剤になりうる」と話す。

 海外に活路を求める再編は食品だけでなく他の業界でも目立つ。来年4月に経営統合する石油元売り大手、新日本石油と新日鉱HDのケースでも、背景には国内の石油需要の低迷がある。石油など海外の資源開発で外国の資源メジャーと対抗できる国際競争力をつけないと生き残れないという危機感が見える。

 損保業界では三井住友海上グループHDなど3社と、損害保険ジャパンなど2社がそれぞれ来年4月の統合を予定し、大手は東京海上HDを含む3グループに集約される。各社ともに少子高齢化などで主力の自動車保険が低迷して苦しんでいる。統合により投資余力を生み出し、海外企業のM&Aなどに打って出る構えだ。

 業界再編の動きについて投資銀行関係者は「金融の正常化で、銀行などから必要な資金調達をできるようになってきた。国内企業はどの業界も危機意識をもっており、国内企業同士の統合などの動きが再び活発化する」(モルガン・スタンレー証券の藤田健二マネージングディレクター)と話す。

 ◇M&A助言で加速も
 国内企業が統合や再編で海外でのM&A志向を強めていることに注目しているのが、M&A助言ビジネスを担う証券会社などだ。

 M&A助言ビジネスとは、買収の情報収集や資金調達を支援したりするビジネスだ。外資系投資銀行が大規模なリストラに追い込まれたため、国内勢の存在感が強まっている。

 金融情報調査会社のトムソン・ロイターによると09年1~7月の間に日本企業がかかわったM&Aの助言ランキングでは、買収金額ベースで野村HDが首位、米シティが2位、件数ではみずほフィナンシャルグループが首位、野村が2位だった。

 野村がアドバイザーをつとめたキリンHDによるフィリピンのサンミゲルビールへの出資は、昨秋買収した旧リーマン・ブラザーズのアジア太平洋部門が掘り起こした案件だ。野村証券の奥田健太郎・企業情報部長は「リーマン買収で、欧州・アジア地域のM&Aに必要な情報収集力、提案力は向上した」と話す。

 買収金額で12位から10位、案件数で5位から3位に順位を上げた大和証券SMBCは、欧州のM&A助言会社を今年7月に買収し、「英独仏などに拠点を持つ会社を買収したことで、国境を越えるM&Aを引き受けやすくなる」(小池茂雄常務)という。

 外資系では、新生銀行とあおぞら銀行の統合で、新生のアドバイザーをつとめたモルガン・スタンレー証券が金額ベースで15位から6位に順位を大きく上げた。モルガン自身も三菱UFJ証券との統合を予定しており、三菱UFJの顧客基盤とモルガン・スタンレーの国際的なネットワークを生かしたM&Aの提案などを目指す。

==============

 ◆今後予定される国内の大型経営統合◆

・新日本石油、新日鉱HD(来年4月)

・損保ジャパン、日本興亜損害保険(来年4月)

・三井住友海上グループHD、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険(来年4月)

・新生銀行、あおぞら銀行(来年10月)

・キリンHD、サントリーHD(交渉中)

 ※HDはホールディングスの略

【関連記事】
ビール:大手4社中間決算 3社が増収を確保
ビール:国内初のPB製品発売へ イオンとセブン&アイが
飲料株:軒並み上昇 キリンは年初来高値
毎日新聞 2009年8月18日 東京朝刊

0 件のコメント:

コメントを投稿